"パソコンに向かうことが趣味"のような生活は卒業できつつあるような気がします。この一週間もパソコンをまったく立ち上げない日が続いていました。メールはすべて携帯電話に転送されますので、別にインターネットに触れないでいても不都合は感じません。
物理的に会社にいる時間が休日も含めて長くなってきているというのもありますし、自由な時間は読書や映画を見るのに使うようになったというのもあります。そして何よりもインターネットの世界に触れていないと安心できないという感覚がなくなってきています。

そんな中、写真の冊子が届きました。
カーモデルをやっていた頃に親しくさせていただいていた、北澤志朗氏の発行する、キットの製作をじっくりと綴って語ってくれる冊子です。北澤氏は人間的にも技術的にも素晴らしい方で、一度は酒を飲みながらじっくりと模型&人生談義をさせていただきたいと思いながらも、結局そういう機会がなかったことがとても残念です。
この冊子は今回でVol.005、つまり第5号です。残念なことにこのVol.005をもってこの冊子の発行は終了とされるとのことです。理由は、ここ数年で普及したブログによって、カーモデルの製作に関する情報がネット上でたくさん開示される中、「有料の印刷物で模型について語る時代は終わった」と判断されたようです。
仕方がないことなのかも知れません。それに、たとえ有料とはいえ、こういう冊子を発行するパワーと時間は大変なものです。それよりもインターネットの世界で発信したほうがという判断は当然のことです。
でも、最初に書いた話題にかかわるのですが、インターネットを5年以上もどっぷりと楽しんで感じた私の結論は、膨大な玉石混合のインターネット情報よりも良質の紙情報の方が私には性にあうということです。
鉄道模型に関しては、書店には老舗の「鉄道模型趣味」誌とネコパブの「RM models」誌があります。インターネットよりも、この2冊を一ヶ月以上かけてじっくりと読むことがとても楽しいわけです。しかし、カーモデル(プラモデル)につきましてはそういう雑誌はありません。実車と絡めて完成写真を掲載している程度。製作過程を何ページもさいて写真付きで掲載している雑誌などありません。それにそもそも、まるまる一冊がカーモデル(プラモデル)という雑誌は無いのです。非定期刊行ではたまにありますが、それも今はほとんどありません。きっと売れないのでしょうね。
そういう中、この北澤氏の冊子は読み応え充分です。すべての活字に目を通したくなるように惹き込まれる文章ですし、すべてに目を通すにはじっくりと長い時間を楽しむことができます。そしてすべて読み終わっても、何度も何度も好きな時に好きなページを好きなことをして読むことができます。ベランダでゆったりとコーヒーでも飲みながら楽しむこともできますし、散歩の途中に公園のベンチで楽しむこともできるわけです。
そういうふうにして、模型誌を楽しみ、時には小説やエッセイも楽しみ、写真集を楽しむ。とても贅沢な時間です。パソコンの前で忙しく画面の文字を追ってしか楽しめないインターネットとは違う時間と空間の使い方をしながら楽しめるのが「本」なのです。
Vol.005が示すように、Vol.999まで大丈夫だったはずの3桁のナンバー。またいつか、こういう冊子の発行をぜひお願いできればと思ったりします。読者や消費者というのは勝手なことをいうものです。それはわかったうえであえて、それが私の願いであり今日言いたいことであることを伝えたいのです。